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和解成立後に取材に応じる男性=2024年9月20日、札幌市中央区、上保晃平撮影

 旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で強制不妊手術を受けさせられたとして、北海道内の男性(84)が国に慰謝料を求めた訴訟は20日、札幌地裁(布施雄士裁判長)で和解が成立した。国が慰謝料など約1770万円を支払う。原告団、弁護団と国が13日に締結した合意に基づくもので、道内で係争中の同種訴訟は全て終結した。

 男性は58年、生活保護法に基づく岩見沢市内の救護施設に入所した。障害や疾病はなかったが、60年ごろに施設職員に市内の病院へ連れて行かれ、不妊手術を受けさせられた。

 和解成立を受け、男性は「(裁判が)終わったんだなと。ただ、人生は後戻りができない。国が手術をして、今となっては取り返しがつかない」と話し、「被害者全員が早く補償を受け、差別のない社会になってほしい」と願った。

 道内では、全国最多2593件の強制不妊手術が実施され、2018年以降、国に慰謝料などを求める訴訟が3件起こされていた。

 そのうち札幌市の小島喜久夫さん(83)が7月に最高裁で旧法を違憲とする判決を勝ち取り、被害者救済に向けて道筋をつけた。ただ、道内の女性と夫が起こした訴訟は同月、女性が手術を受けた事実は認められないとして最高裁が上告を退け、敗訴が確定した。(上保晃平)

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